ダグラス窩膿瘍って何?—原因・症状・検査・治療をやさしく整理
ダグラス窩は、女性では子宮のうしろと直腸の前にある“骨盤のいちばん深いくぼみ”。ここに膿(うみ)がたまる状態を「ダグラス窩膿瘍」といいます。
ダグラス窩とは
女性:子宮のうしろ×直腸の前のくぼみ。ここに膿がたまるとダグラス窩膿瘍です。
男性では「直腸と膀胱の間」の同部位に相当し、膀胱直腸窩膿瘍と呼ばれます(診断名として「ダグラス窩膿瘍」と表記されることも)。
なぜ起こる?(原因)
- 骨盤内感染(PID)の延長:子宮頸管・子宮内膜・卵管・卵巣の感染が奥へ広がる
- 原因菌:クラミジア、淋菌、腸内細菌(大腸菌など)ほか
- 出産・流産・中絶・IUD挿入直後・子宮内操作の後に起こることも
- まれに虫垂炎・腸炎など消化器由来の感染波及
主な症状
- 下腹部の奥の痛み、腰痛・肛門痛(いきむと増悪)
- おりもの増加・悪臭、不正出血
- 発熱(高熱)・悪寒・だるさ
- 排尿・排便がしにくい、排便時痛
- 血液検査で白血球・CRP上昇
似た症状は卵巣出血・卵巣嚢腫の捻転・虫垂炎などでも起こるため、自己判断は禁物です。
どうやって診断する?
- 内診(腟・直腸指診):くぼみの圧痛・腫れを確認
- 超音波(経腟/経腹):ダグラス窩の液体貯留・膿瘍を描出
- 血液検査:白血球・CRPなど炎症反応
- 培養検査:おりもの・頸管の細菌検査(原因菌同定)
- CT/MRI:広がり・合併症が疑われる場合に追加
治療の基本
軽症〜中等症
- 抗菌薬(内服/点滴)で原因菌をカバー
- 痛み止め・補液・安静
- 性感染が疑われる場合はパートナーの検査・治療も検討
重症・膿が大きい/抗菌薬が効かない場合
- 排膿(ドレナージ)が必要になることがあります
- 超音波ガイド下の経腟穿刺/切開
- 経皮ドレナージ(画像ガイド下)
- 腹腔鏡手術(合併症・広範囲感染時)
- 入院のうえ点滴治療・全身管理
放置すると不妊・慢性骨盤痛・敗血症などのリスクが上がります。早期治療が大切です。
受診の目安(こんな時はすぐ相談)
- 38℃以上の発熱+下腹部痛/肛門痛が続く
- おりものの急な増加・悪臭、不正出血
- 排尿・排便がつらい、お腹の張りが強い
- 妊娠の可能性がある腹痛・発熱
- 市販薬で様子を見ても改善しない/悪化する
立てないほどの痛み、ふらつき・冷汗、嘔吐を伴う場合は救急受診を。
再発予防・日常のポイント
- 早めの受診:おりものの変化・骨盤痛を放置しない
- 性感染症対策:コンドームの活用、必要時の検査
- IUD挿入・流産後・子宮内手術後は指示どおりの経過観察
- 体調不良時は無理をしない、水分と休息
- 処方された抗菌薬は飲み切る(中断は再燃リスク)
男性の場合
男性の同部位は膀胱直腸窩で、膿がたまると膀胱直腸窩膿瘍。発熱・直腸痛・排尿排便困難などの症状があり、受診は外科・泌尿器科が基本です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 内科で原因不明と言われました。産婦人科で診てもらうべき?
A. はい。おりもの異常+下腹部痛+発熱があれば、産婦人科での内診・超音波が診断の近道です。
Q2. 抗菌薬だけで治りますか?
A. 軽症は改善が見込めますが、膿が大きい/効果不十分なら排膿が必要になることがあります。
Q3. 繰り返さないために何をすれば?
A. 原因菌や誘因の説明を受け、性感染症対策・術後フォローを含めた再発予防を一緒に計画しましょう。
まとめ・ご予約
「発熱+下腹部の奥の痛み+おりもの異常」は要注意。早めに産婦人科で評価を受けましょう。必要な検査・治療(抗菌薬、排膿、入院管理)を組み合わせ、安全に回復を目指します。
